会長 藤本 卓司
本年6月13日とりまとめられた政府の消費者行政推進会議の最終報告は、強い権限を持った消費者庁を創設するとともに、これを実行あらしめるため地方消費者行政を飛躍的に充実させることが必要であること、国において相当の財源確保に努めるべきこと等を提言した。
上記提言を当会は、評価し、支持するものである。
当会は、これまでも、大規模被害が発生した消費者事件について説明会や110番を実施し、県内消費生活相談窓口と連携して消費者相談窓口を設置したり、近時においては多重債務者無料相談会に相談担当者を派遣するなど、これまでも多くの消費者問題に取り組んできた。その経験からも、消費者問題の未然防止、あるいは早期解決のためには、相談窓口を充実させ、問題を早期に発見し、その情報を集約し、事件の解決や被害の拡大の防止に向けた迅速な対応がなされることが不可欠であると考える。
そして、地方自治体の消費生活相談窓口は消費者にとって身近な相談窓口である。国及び地方自治体は、民間にはない情報集約・広報手段を有しており、それを用いた事件解決や被害拡大防止が可能であるが、全国レベルでの消費者問題が多発している現状からすれば、地方単位での対応だけでなく、国単位での対応も不可欠である
政府は、上記提言にもあるように消費者・生活者重視への政策転換、消費者行政の一元化及び強化の方針を打ち出し、地方消費者行政の充実強化と緊密な全国ネットワークの構築の必要性を取り上げている。
しかし、その一方で、地方自治体の消費者行政予算は年々削減されており、十分な相談態勢がとれない、あっせん率の低下、被害情報集約による事業者規制や消費者啓発が十分行えないなどの問題を抱えている。
奈良県においても、商品テストが2005年(平成17年)度からは繊維関係のみの実施となり、県内の消費生活相談窓口のある地方公共団体(県と27市町村)の相談情報が全てPIO-NETに集約されていたが、2004年(平成16年)度からは、端末のある一部地方公共団体(県・奈良市・大和郡山市・天理市・生駒市)のみしか集約されなくなっている。
当会は、消費者庁の実現にあたって、政府が地方自治体の消費者行政の現状を十分調査し、下記事項を実現することを求める
- 消費者庁が、消費者政策についての企画・立案を行い、消費者被害が多発する分野に関係する法の所管を消費者庁に移し、関係省庁への勧告のみならず、事業者に対する直接の指導監督権限を行使できるようにすること
- 消費者庁が、地方の相談窓口、消費者等からの被害関連情報を一元的に集約し、調査・分析・公表する権限と原因究明機関を持つこと
- 消費者の相談が、消費生活相談窓口で適切に助言・あっせんにより解決されるよう地方自治体の相談窓口を充実・拡大させ、そのために必要な人的・物的制度の構築、並びにそれを裏付ける予算を政府として確保すること