2022(令和4)年6月22日
奈良弁護士会会長 馬場智巌
- 鹿児島地方裁判所は、本日、いわゆる大崎事件の第4次再審開始請求につき、請求を棄却する決定をしました。
当会は、大崎事件の第3次再審開始請求に対する最高裁判所の請求棄却決定を受けて、2019(令和元)年8月27日付けで、「大崎事件最高裁決定を契機として刑事再審手続に関する法改正を訴える会長声明」を発表しています。そこにおいて既に述べたとおり、大崎事件は、本来速やかに再審が開かれるべき事件です。 - したがって、このたび、鹿児島地方裁判所が、第4次再審開始請求に対して、現地での進行協議期日を実施したり、5名の鑑定人の証人尋問を行ったりするなど積極的な審理を行ったにも拘わらず、新旧全証拠の総合評価を適切に行わずに再審請求を棄却したのは、全く意外というほかありません。
同裁判所の請求棄却決定は、再審開始請求事件においても全証拠を「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則に則りつつ総合的に判断すべきことを宣言した白鳥・財田川決定に明らかに違反しています。このような不合理な論理による棄却決定は、第3次再審開始請求に対する最高裁判所の不当な棄却決定に萎縮して、結論先にありきで追従してしまったものとしか思えません。 - 大崎事件は発生からもはや40年以上の歳月が経過し、再審請求人の原口アヤ子さんは現在95歳です。これだけの長きにわたり、再審によってえん罪を晴らす機会を与えられてこなかった同氏の精神的苦痛は想像を絶します。一刻も早く救済がされなければ取り返しがつきません。
- よって、当会は、このたびの鹿児島地方裁判所の不当な請求棄却決定に対して強く抗議します。そしてまた当会は、原口さんのような苦難を背負う市民が今後出ることのないよう、えん罪被害からの速やかな救済のためのあるべき再審法改正に向けて引き続き努力していく所存です。