本年3月24日、奈良県議会において、「奈良県少年補導に関する条例」(以下、「本条例」という。)が賛成多数により可決された。
しかし、本条例には主たるものだけでも以下のような重大な問題点がある。
第一に、本条例は、警察職員の権限を拡大して少年に対する監視・規制・取り締まりを強化することが少年非行の防止と少年の健全な育成につながる、との発想に基づくものである。しかし、そのような警察職員の権限に依存する発想には根本的な誤りがある
第二に、本条例が定める「不良行為」はその内容において極めて広範にわたっており、かつ、その定義が漠然としているものもある。しかし、犯罪や少年法上の「ぐ犯」に該当しない行為を広く「不良行為」と定義して警察職員の権力行使の対象とするのは、警察官職務執行法・少年法等現行の法体系に反する少年に対する重大な人権侵害である。それは、憲法94条の条例制定権の範囲を逸脱するものである
第三に、本条例は、県民一般に対し「不良行為」を発見したときにこれを止めさせる努力義務及び警察職員等に通報する努力義務を定めている。しかし、このような法的義務付けは県民の良心の自由に対する不当な侵害となり、互いに監視し通報しあうような息苦しい地域社会を作り出すおそれがある。また、少年の大人に対する不信感を増大させ、かえって少年の健全育成を損なうことになる。
このように、本条例は重大な問題点を含むものであり、そのため、当会をはじめとして制定に反対する意見がいくつも表明されていた。にもかかわらず、本条例は、昨年11月に県警により要綱案が発表されてからわずか約4か月という短期間で、県民に対する十分な周知及び県民の間での十分な議論を経ないまま拙速に制定されたものである
そこで、当会は、今後とも県民に対し本条例の問題点を訴え、施行の停止を求めるとともに本条例の廃止の必要性を含め、規制・取り締まりに依存しない方策について検討し提言していく所存である。