会長 佐々木 育子
政府は、昨年9月19日に国会で採決され、本年3月29日に施行された安全保障関連法(改正PKO協力法を含む)にもとづき、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加している陸上自衛隊施設部隊に対し、「駆け付け警護」と「宿営地の共同防護」の任務を付与するかどうかを、本年11月に判断する方針を固めた。
しかし、当会は、安全保障関連法自体が憲法に違反するものであり、無効であると指摘してきた。国連PKOも、かつての停戦監視から内容を大きく変化させており、南スーダンPKOを含め、国連安保理から武力の行使を容認されるのが通例となっている。それにもかかわらず、政府は、国連PKOにおける自衛隊の活動は、憲法が禁じた国家権力の行使としての「武力の行使」ではなく、個々の自衛隊員の「武器使用」に過ぎないという論理で、憲法との整合性を説明してきた。その矛盾が、いま、南スーダンで顕在化しようとしている。
すなわち、南スーダンでは、本年7月に大統領派と副大統領派の大規模な戦闘が発生し、市民数百人や中国のPKO隊員が死亡している。本月8日には民間人を乗せたトラックが待ち伏せ攻撃を受けて市民21人が死亡した。国連南スーダン派遣団は、本月12日の声明で、「暴力や武力衝突の報告が増加していることを非常に懸念している」との声明を発表した。
このような状況の下で、さらに、改正PKO法で新たに加えられた「駆け付け警護」や「宿営地の共同防護」などといった危険な任務を付与し、これらの任務遂行のための武器使用を認めるならば、憲法の禁じた「武力の行使」に発展し、自衛隊員が政府軍や反政府軍の兵士を殺傷したり、自らも犠牲になる可能性が極めて高い。
よって、当会は、政府に対し、南スーダンに派遣している自衛隊に対し、「駆け付け警護」や「宿営地の共同防護」などの新任務を付与し、これらの任務遂行のための武器使用権限を付与することに強く反対するとともに、改めて、違憲の安全保障関連法のすみやかな廃止を求めるものである。