奈良弁護士会

国選弁護人報酬増額等をもとめる決議

奈良弁護士会
 北岡 秀晃

奈良弁護士会常議員会は、国選弁護人に対する報酬の増額等について、以下のとおり要望する

1国選弁護人報酬の増額

  1. 国選弁護人報酬の支給基準を第一審標準事件1件あたり20万円以上とし、このために必要な予算措置を講じること
    国選弁護は、被告人の権利であるとともに、国(裁判所)の義務である(憲法37条3項)。現在、全国で被告人の弁護の約4分の3が国選弁護によって担われている。しかし、国選弁護人報酬は、2年連続で減額され、地方裁判所標準事件(3開廷)1件あたりの報酬支給基準額は8万5200円に引き下げられた
    これは、各国選弁護人の熱意に甘え、国が憲法上の責務を怠るものである。国選弁護人報酬の支給基準を第一審標準事件1件あたり20万円以上とされたい。
  2. 事件の難度(罪質・罪数など)、法廷外の準備活動、法廷内の具体的訴訟活動、出廷回数、審理期間など、弁護活動に費やされる労力の総体に応じた報酬及び日当を支給すること
    事案が複雑で審理が長期化した場合などの報酬・日当の支給額の不合理性は顕著である。
    3開廷を超える審理においては、弁護人の公判準備には相当の負担があることを考慮されたい。
  3. 外国人の被告(要通訳)事件については、他の事件より弁護活動に困難が多いことを考慮し、通常の事件の場合の1.5倍程度の額の報酬を支給すること
    外国人被告事件については、弁護活動全般にわたり通訳が必要であるが、通訳人の確保と日程調整が容易でない。
    そして、通訳人を介しても意思疎通に困難があり、被告人に日本の法律制度や裁判手続を理解させる必要もある。また、被告人の文化的・宗教的習慣等に配慮しつつ、通訳が適正に行われているかも配慮する必要もある。
    このように、外国人被告事件の弁護活動は日本人被告事件に比べてかなり困難な面があるので、外国人被告事件の報酬は、通常の事件の場合の1.5倍程度の額にされたい。

2弁護活動のための記録謄写料、交通費、通信費、通訳料、翻訳料等の実質は、本来の報酬に必ず実費加算し支給すること

国選弁護制度が、被告人の基本的人権として、憲法37条3項の弁護人依頼権に基づく以上、「実質」は国が全額負担すべきである。

また、弁護人が、慎重に証拠関係を検討して被告人の権利を擁護するためには、記録を謄写して手元に置くことは必要不可欠であり、謄写料も国選弁護における当然の実費として全額支払われるべきである。

3特別案件については、他の事件より弁護活動に困難が多いことを考慮し、相当額の報酬を支給すること

特別案件の国選弁護人は、その弁護活動にあたって、長時間特別の困難と負担を余儀なくされている。このような特別案件については、私選弁護に匹敵する相当額の報酬を支給されたい。


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